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タイムマシンには乗らない

いつか歩いたこの道。記憶の糸を手繰り手繰りせずとも、蘇えるあのとき。
ここには、コンビニエンスストアがあったんだ。
遅れて来る僕を、君は嫌な顔ひとつせず、立ち読みして待っていてくれたんだったね。
懐かしい匂いは、3月のよく晴れた午後の風に乗って、やってきては消え。消えてはやってくるんだ。
思い出とは、何とも美しい。共有したい。君とあの日を。
でも、電話はしない。君はきっとこう言うのだから。
「私は、タイムマシンには乗らない」

8月は僕に嘘をつく。ギラッギラに照らされた僕は、あの夏に入り浸ってしまう。
それは、現実でもなく。幻でもなく。
ただ、そこにある嘘なのだと。嘘なのだと。自分に言い聞かせながらも、
この嘘が嘘であってくれることを切に願って。最終電車に乗り込んで。
今のこの気分を伝えようと、君に長々とメールを打つんだよ。
気が済んだところで送るのはやめておく。
君の返信はわかってる。
「私は、タイムマシンには乗らない」

「僕は変わらないよ。君もきっと、変わるなよ。」
大真面目に語り合った深夜のファミリーレストランの一角。
あの頃の僕らを笑うつもりはないけれど。
知らず知らず僕らは時間の海を泳いでいる。
「あんときは良かったなあ」
とか感傷に浸りそうになったら、
僕は心のずっと奥の奥の引き出しにしまった君の言葉を思い出すことにするよ。
「私は、タイムマシンには乗らない」

あのとき君が好きだった、歌。言葉。匂い。
思い出したくなったら、いつでも僕んところへおいでよ。
あのとき君が好きだった歌を、チューニング甘いギターで弾いてあげるし、
君が好きだった言葉全て、何遍も何遍も繰り返してあげるし、
君が好きだった匂い見つけに、レンタカー借りてどこへでも連れて行ってあげるからさ。
もしも、君がその未来に、夢も希望も見られなくなって、
絶望しか見られなくなったら、いつでも僕んところへおいでよ。
あのとき君が熱く語った夢だとか、キラキラしてた希望だとかを思い出させてあげて、
君の目の前に立ち塞がる絶望ってやつを、僕の無力な両手でぶった斬ってあげるからさ。

「ありがとう。
あなたは、やっぱりとってもいい人だわ。
でもね。私は今をいきたいの。
私は、タイムマシンには乗らない。」
[ 2011/05/06 22:38 ] 戯れ言(川口) | TB(0) | CM(0)

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